こんにちは、渋谷のカフェバー「SPRING NOTE」でマスターをしている大塚です。
「サントリーオールドはウイスキーじゃない」という噂を聞いたことありますか?
だるまの愛称で長年親しまれるボトルですが、その中身について「混ぜ物や添加物があるのでは?」とかつてのイメージで語られたり、「まずい」という評価を耳にすることもあります。
過去のオールド・ショックという出来事も、そうした評判の一因かもしれません。
しかし、現在のオールドは山崎の原酒をキーモルトとしており、そのシェリー樽由来の風味は「うまい」と多くのファンを魅了しています。
味わいの評価は、飲み方一つで大きく変わるものです。
また、「製造中止」や「終売」になったのではという声も聞かれますが、それも誤解です。
この記事では、そうした様々な疑問や評価について、一つひとつ丁寧にお答えしていきます。
- 「ウイスキーじゃない」と言われる歴史的背景
- 現在の原材料やウイスキーとしての評価
- 本来の味を楽しむためのおすすめの飲み方
- 製造中止や終売に関する噂の真偽
「サントリーオールドはウイスキーじゃない」と言われる理由

- 愛称「だるま」の歴史とウイスキーの定義
- 過去にあった混ぜ物の疑惑について
- 添加物が検出されたという経緯
- 世間を揺るがしたオールド・ショック
- 現在のウイスキーとしての中身を解説
- 品質を支える山崎蒸溜所の原酒
愛称「だるま」の歴史とウイスキーの定義

サントリーオールドは、1940年に完成し、戦後の1950年に発売された歴史あるウイスキーです。
丸みを帯びた特徴的なボトルの形状が、縁起物である「だるま」に似ていることから、古くからその愛称で親しまれてきました。
ただ、このサントリーオールドが「ウイスキーじゃない」と言われる背景には、ウイスキーそのものの定義が関係しています。
一般的なウイスキーの定義は、大麦やトウモロコシなどの穀類を原料とし、糖化・発酵させた後に蒸留し、木製の樽で貯蔵熟成させたお酒を指します。
しかし、2021年4月から日本洋酒酒造組合によって「ジャパニーズウイスキー」の表示に関する厳格な基準が施行されました。
この基準では、原料の麦芽や穀類、水は日本国内で採水されたものを使用し、糖化から発酵、蒸留、熟成、瓶詰めに至るまで、全ての工程を日本国内で行うことが義務付けられています。
サントリーオールドは、この新しい基準において、一部に海外から輸入した原酒を使用しているため、「ジャパニーズウイスキー」を名乗ることができません。
これが、「サントリーオールドは(厳密な定義のジャパニーズ)ウイスキーじゃない」と言われる大きな理由の一つとなっています。

過去にあった混ぜ物の疑惑について

サントリーオールドの評判を語る上で、過去にさかのぼる「混ぜ物」の疑惑は避けて通れないテーマです。
1981年、日本消費者連盟が入手したとされるサントリーの内部資料に基づき、オールドの成分構成に関する指摘がなされました。
その資料によると、当時のオールドの成分は、モルト原酒やグレーンウイスキーだけでなく、汲水、甘味果実酒、リキュール、カラメルなどが含まれているとされていました。
ウイスキーは本来、モルトウイスキーとグレーンウイスキーのブレンドが主体であるため、リキュールなどが含まれているとすれば、それは純粋なウイスキーとは言えないのではないか、という疑惑が浮上したのです。
さらに、ここで言う「グレーンウイスキー」という表記自体が、穀物(grain)を意味するのではなく、製造地である山崎の地形(glen:渓谷)に由来するもので、中身は廃糖蜜などから作られた工業用アルコールではないか、という主張までなされました。
もちろん、これらの疑惑に対してサントリー側も説明を行いましたが、消費者に大きな衝撃を与えた出来事であったことは間違いありません。
添加物が検出されたという経緯

前述の混ぜ物疑惑より少し前の1978年にも、サントリーオールドに関する別の問題が指摘されています。
それは、日本消費者連盟が行った国内ウイスキーの糖分検査において、サントリー製品から糖分が検出されたというものです。
ウイスキーは蒸留酒であり、製造工程で糖分はアルコールに変わるため、本来は糖分を含まないお酒です。
この検査結果は、風味を調整するために甘味料などの添加物が加えられているのではないかという疑念を生むきっかけとなりました。
これらの指摘を受け、サントリーは1980年代に製品の改良を行ったとされています。
そのため、現在のサントリーオールドには、風味付けのための甘味料などは使用されていません。
しかし、過去のこうした経緯が、今なお「サントリーオールドは添加物が入っているのでは?」というイメージに繋がっていると考えられます。
世間を揺るがしたオールド・ショック

「オールド・ショック」とは、1980年代中頃にサントリーオールドの売上が急激に落ち込んだ現象を指す言葉です。
1970年代から80年代初頭にかけて、オールドは日本のウイスキー市場で絶大な人気を誇り、サントリーの売上の大半を稼ぎ出すほどの主力商品でした。
しかし、1984年頃からの焼酎ブームや、消費者の好みがワインやカクテルなど多様化したことで、「洋酒といえばウイスキー」という時代が終わりを告げます。
さらに、貿易摩擦の是正を目的とした酒税法改正により、これまで高価だったスコッチウイスキーなどの輸入品が安価になり、国産ウイスキーは厳しい競争にさらされることになりました。
この市場環境の激変により、王者であったオールドの出荷量は激減し、サントリーの経営に大きな打撃を与えました。
このオールド・ショックは、製品の品質そのものが問題だったというよりは、時代の変化に対応しきれなかった結果と言えるでしょう。
この経験を経て、サントリーはより多様なニーズに応えるための商品開発へと舵を切っていくことになります。
現在のウイスキーとしての中身を解説

過去に様々な疑惑や厳しい時代を経験したサントリーオールドですが、現在の製品はウイスキーとしてどのような中身なのでしょうか。
公式サイトの情報によると、現在のサントリーオールドのスペックは以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
製品名 | サントリーウイスキー オールド |
酒類の分類 | ウイスキー |
原材料 | モルト、グレーン |
アルコール度数 | 43% |
希望小売価格(税別) | 1,880円 |
過去に指摘されたリキュールや甘味料といった添加物は、現在の原材料表記には含まれていません。
モルト原酒とグレーン原酒をブレンドして作られる、正統派のブレンデッドウイスキーであることが分かります。
前述の通り、輸入原酒を使用しているため厳密な「ジャパニーズウイスキー」の定義には当てはまりませんが、ウイスキーという大きな枠組みにおいては、その範疇にある製品です。
長年にわたる改良を経て、現在の品質が確立されていると言えるでしょう。
品質を支える山崎蒸溜所の原酒

サントリーオールドの味わいの核となっているのが、日本初のモルトウイスキー蒸溜所である「山崎蒸溜所」で造られた原酒です。
特に、味わいの骨格を形成しているのは、上品な甘さと華やかな香りをもたらすシェリー樽で熟成させた原酒とされています。
山崎蒸溜所は、日本のウイスキーの父と呼ばれる鳥井信治郎が、スコットランドのウイスキーに負けない国産ウイスキーを造るために設立した場所です。
その伝統と技術が、サントリーオールドの品質を根底から支えています。
サントリーのブレンデッドウイスキーには、「響」や「角瓶」など様々な銘柄がありますが、サントリーオールドもまた、山崎蒸溜所の貴重な原酒をキーモルトとして使用することで、その独特の風味を確立しているのです。
手頃な価格帯でありながら、山崎由来の本格的な味わいの一端を感じられる点が、今なお多くのファンに愛される理由の一つと言えます。
サントリーオールドはウイスキーじゃない?味と現在の評価

- シェリー樽由来のうまいと言われる甘み
- まずいという評判は飲み方で変わるか
- 製造中止になったという噂の真相
- 終売したというのは本当なのか
- まとめ:サントリーオールドはウイスキーじゃない?
シェリー樽由来のうまいと言われる甘み

サントリーオールドの味わいを語る上で最も特徴的なのは、キーモルトであるシェリー樽原酒に由来する、華やかで豊かな甘みです。
「うまい」と評価するファンの多くは、この独特の風味を高く評価しています。
口に含むと、レーズンやドライフルーツを思わせる濃密な甘さが広がり、続いてバニラやカラメルのような香りが鼻に抜けていきます。
全体的にまろやかでコクがあり、アルコールの刺激が比較的穏やかな点も特徴です。
このリッチでメロウな味わいは、ウイスキーを飲み慣れていない初心者の方や、スモーキーなタイプが苦手な方にも受け入れやすいでしょう。
特に、少し加水したり、ロックでゆっくりと味わうことで、シェリー樽由来の上品な甘みがより一層引き立ちます。
サントリーオールドの「うまさ」の神髄は、この甘く華やかな香りと深いコクにあると言っても過言ではありません。
まずいという評判は飲み方で変わるか

一方で、「サントリーオールドはまずい」という評価が存在するのも事実です。
このネガティブな評価は、主にその独特の甘みと香りが原因となっていると考えられます。
すっきりとしたドライな味わいを好む方にとっては、オールドの濃厚な甘さが口に合わず、「くどい」「甘ったるい」と感じてしまうことがあります。
また、ストレートで飲むと、アルコールの刺激と共に甘みがダイレクトに感じられるため、人によっては「まずい」という印象に繋がる可能性があります。
しかし、この評価は飲み方一つで大きく変わることがあります。
次の表は、飲み方による味わいの変化をまとめたものです。
飲み方 | 特徴 | おすすめのシーン |
---|---|---|
ストレート | オールド本来の甘みと香りを最も強く感じられる。 | ウイスキーの味をじっくり確かめたい時に。 |
ロック | 冷やすことで甘みが引き締まり、キレが生まれる。 | 食後にゆっくりと味わいたい時に。 |
水割り | まろやかさが増し、アルコール感が和らぐ。 | 強いお酒が苦手な方に。和食との相性も良い。 |
ハイボール | 炭酸で甘みが弾け、爽快感と華やかな香りが楽しめる。 | 食事と共に気軽に楽しみたい時に。 |
このように、まずいと感じる方はハイボールや水割りなど、甘みを少し抑えて爽やかに楽しめる飲み方を試してみることをおすすめします。
自分の好みに合った飲み方を見つけることで、サントリーオールドの新たな魅力に気づくかもしれません。

製造中止になったという噂の真相

ネット上では、時折「サントリーオールドは製造中止になった」という噂が流れることがあります。
しかし、結論から言うと、この噂は誤りです。
サントリーオールドは、2025年現在も安定して製造・販売が続けられており、スーパーマーケットや酒店、オンラインストアなどで購入することが可能です。
では、なぜこのような噂が流れるのでしょうか。
理由の一つとして考えられるのは、過去に何度か行われたリニューアルやラベルデザインの変更です。
例えば、かつてのオールドは「リッチ&メロー」というキャッチフレーズでしたが、1994年に「マイルド&スムーズ」に、その後も何度か名称やデザインが変わっています。
昔のイメージを持つ人が現在のボトルを見て「あのオールドはなくなった」と勘違いし、それが「製造中止」の噂に繋がった可能性があります。
終売したというのは本当なのか

「製造中止」と同様に、「サントリーオールドは終売した」という噂も事実ではありません。
サントリーのウイスキーラインナップにおいて、今もなお現役の定番商品として位置づけられています。
この「終売」の噂が生まれる背景には、限定品の存在が考えられます。
サントリーオールドは、定番の700mlボトルの他に、毎年年末になると数量限定で「干支ボトル」を発売しています。
この干支ボトルは、その年の干支をかたどった美しいデザインが特徴で、コレクターズアイテムとしても人気があります。
これらの限定品は、当然ながら販売期間や数量が限られているため、販売が終了すると「オールドが終売した」と誤解される一因になっているのかもしれません。
しかし、通年販売されている定番品がなくなるわけではないので、安心して楽しむことができます。
まとめ:サントリーオールドはウイスキーじゃない?

- サントリーオールドは「だるま」の愛称で長年親しまれる日本のウイスキー
- 「ウイスキーじゃない」と言われる背景には歴史的な経緯が存在する
- 2021年の新基準では「ジャパニーズウイスキー」の定義に当てはまらない
- 理由は海外の輸入原酒を使用しているためと公表されている
- 過去には混ぜ物や添加物の疑惑が報じられたことがある
- 現在は改良され原材料は公式サイトによるとモルトとグレーン
- 1980年代には売上が激減するオールド・ショックを経験した
- 味わいの核となるキーモルトは山崎蒸溜所の原酒
- 特徴はシェリー樽由来の甘く華やかな香り
- 「うまい」と感じる人がいる一方「まずい」という評価も存在する
- まずいと感じる場合はハイボールなど飲み方の工夫がおすすめ
- 製造中止や終売の噂は誤りで現在も継続して販売されている
- 年末に発売される数量限定の干支ボトルも人気を集めている
- 手頃な価格で楽しめるブレンデッドウイスキーとして確立した存在
- 定義は厳密でも多くのファンに愛される日本のウイスキーであることは確か
